水上村の人達は7割ほどがベトナム人です。
ベトナム人はベトナム人でコミュニティーを作るので日常会話はベトナム語になります。
もちろん子どもたちもベトナム語を喋るようになります。
しかし、ここはカンボジアです。
カンボジア人がベトナム語を話すことはまずありません。
水上村の人達も魚を売ったり何かを買ったり、全く陸にあがらないことはありません。
その時にカンボジア語ができないと肩身の狭い思いをすることになるのです。
なのでカンボジアで生活するためにはカンボジア語が必要になります。
そこでカンボジア語を教える識字教室をしています。
先生は現地の方にしてもらっています。
僕は先生のお給料等お金の管理や、必要なものの陸に買い出しや、時期ごとの行事をどうするかをみんなで考えてもらうようにする係でした。
実際は先生たちが頑張ってくれていたので、僕は名ばかりの校長先生でした。
本当の僕の役割は子どもたちとクタクタになるまで遊び、ケンカをしてしょげてる子がいたら励まし、「今日もよく来てくれました」とあいさつして回ることでした。
識字教室には3つのクラスがあります。
これは一番下のクラスです。
22個の母音と33個の子音でローマ字のように作られます。
ここでは簡単な日常会話とカンボジア語のABCを習います。
真ん中のクラスではある程度は文字もかけるようになります。
これは先生が言った文字を小さな黒板に書いて見せているところです。
上のクラスになると日常会話はバッチリできるようになります。
下の二つの先生はカンボジア語ができるベトナム人でしたが、上のクラスの先生はカンボジア人です。
この先生はベトナム語がほとんどできないので授業は全部カンボジア語でしています。
カンボジア語以外にも算数などの授業がありますが、子どもたちは絵本の時間が大好きです。
みんな前のめりで歓声を上げながら聞いています。
それにつられて先生もテンションが上がりジェスチャーを交えながらの絵本の授業はとても楽しそうでした。
識字教室に通う上で大切になるのが、このスクールボートです。
各家庭に舟はあるのですが、親が仕事で使ってしまうと子どもたちは家から出れなくなってしまいます。
そこで、スクールボートで送り迎えをするのです。
時々スクールボートが故障をしたり、乾季の時期は水位が浅くなりボートが使えない時があります。
そうなると識字教室に来る子どもたちは1/3ほどになってしまうのです。
カンボジアでは8月が年度末になるので、その時期に卒業式をします。
毎年10~15人ほどが卒業していきます。
上のクラスは20~30人ほどいるのですが、先生が厳しい目で選んでいます。
それは、彼らは識字教室を卒業してカンボジアの小学校に入学します。
そこで中途半端なカンボジア語しかできないといじめられることがあるので厳しく判断をするのです。
それに、大きな子は10歳ほどになります。
そこから小学校を6年通うのは至難の業になります。
それは体が大きくなると学校よりも家の仕事を手伝うことが優先されるからです。
しかし、私たちは彼らが少しでも小学校に通いやすくなるために卒業証書だけではなく制服もプレゼントしていました。
もちろん小学校も湖に浮いています。
小学校の手続きがすべて終わると、子ども達だけではなく先生達もお待ちかねの遠足に行きます。
この時はアンコールワットに行きました。
子ども達にとったら陸地で走り回れるだけで大喜びです。
楽しかった思い出と共に卒業する彼らをいつも誇りに思っていました。